ナイトワークで遅くまで働いていると、どうしても生活リズムが不規則になりがちです。
疲れがたまりやすいだけでなく、眠りの質も低下してしまうことが多いでしょう。
そこで今回は、仕事の疲れを癒し、心と体をリフレッシュできる「疲労回復入浴法」をご紹介します。
毎日のバスタイムが癒しのひと時となるよう、ぜひ参考にしてみてください。

温度と時間がカギ!ベストな湯加減と入浴時間

夜型勤務でこわばった身体をほぐすには、湯温と入浴時間の組み合わせが重要です。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」によると、就寝1〜2時間前の入浴は入浴後の熱放散を促進し、入眠を促す効果が期待できるとされています。
ただし、極端に湯温が高いと交感神経の活動が亢進し、かえって入眠を妨げる可能性があるとも記載されています。
出典:厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」(2023-12-21公開、2024-09-18一部修正)

また、花王健康科学研究会の研究では、「40℃のお湯に10分、全身浴で浸かる」ことが健康作用を高める基本の入浴法として推奨されています。
この温度帯であれば温熱作用を得ながら身体への負担を最小限に抑えられると考えられています。
出典:花王健康科学研究会「入浴と健康

入浴パターン早見表

入浴タイプ 温度 時間 おすすめシーン 期待できる効果
基本の全身浴 40℃ 10〜15分 忙しい日の短時間ケア 血流促進、筋肉の緊張緩和
半身浴 38〜39℃ 15〜20分 のぼせやすい方、心臓への負担軽減 脚のむくみ対策、じんわり保温
ぬる湯長め 38℃前後 20〜30分 連勤後の深い疲労回復 副交感神経優位、深いリラックス

基本の全身浴(40℃×10〜15分)

40℃程度は”熱すぎず、ぬるすぎない”バランスのとれた温度帯といえます。
この温度帯では血流がスムーズになり、筋肉の緊張がほぐれやすくなる一方、交感神経を刺激しにくいため入浴後の眠りも妨げにくいでしょう。
忙しい日でも肩までしっかり浸かって10分を目安にすると、全身が均一に温まりやすくなります。

半身浴でじんわり長く温まる方法

「全身浴はのぼせやすい」「心臓に負担をかけたくない」という日には、おへその下あたりまで湯を張る半身浴がおすすめです。
42℃以上の高温は交感神経を刺激しやすいとされているため、38〜39℃に設定し、15〜20分を目安に深呼吸しながら過ごすとよいでしょう。
下半身を中心に温めることで血液が心臓へ戻りやすくなり、脚のむくみ対策にも役立つと考えられています。

ぬる湯×長めで”とことんリラックス”したい夜

連勤後など深い疲労感があるときは、38℃前後のお湯に20〜30分ゆっくり浸かる方法も効果的です。
ただし、長湯は脱水を招きやすいため、入浴前後にコップ1杯の水を補給するよう心がけてください。
本や音楽を楽しみながら気持ちがほどける感覚を味わうと、副交感神経がより優位になりやすいといわれています。

アロマでリラックス!香りの力で疲れを吹き飛ばす


強い照明や接客トークで高ぶった神経を静めたい夜は、湯船にアロマの香りをプラスしてみてはいかがでしょうか。
精油(エッセンシャルオイル)は植物由来の揮発成分を高濃度で含んでおり、わずか数滴でも浴室全体に香りが広がります。
呼吸とともに心地よい香りを取り込むことで、副交感神経が優位になりやすくなると考えられています。

おすすめ精油の特徴と使い方

精油の種類 香りの特徴 おすすめの使い方 こんな夜に
ラベンダー(真正) ふんわりハーバル調 40℃の湯に2〜3滴 緊張や不安を和らげたいとき
スイートオレンジ 爽やかな柑橘系 40℃の湯に2〜3滴 疲労感をリフレッシュしたいとき
レモン(水蒸気蒸留) すっきりシトラス調 40℃の湯に1〜2滴 気分転換したいとき

ラベンダー(真正ラベンダー)は、ふんわりとしたハーバル調の香りが特徴で、緊張や不安を和らげる目的で古くから用いられてきました。
40℃前後の湯に2〜3滴たらしてよくかき混ぜてから入浴すると、穏やかな香りに包まれて自然と呼吸が深まるでしょう。
柑橘系のレモンやスイートオレンジは、爽やかさが脳をリフレッシュさせ、「もうひと踏ん張り」の疲労感をやわらげたいときに好適です。
夜の使用では、光毒性のないスイートオレンジや、光毒性が低い水蒸気蒸留法で抽出されたレモンを選ぶと安心できます。
自然塩に精油を数滴垂らして湯に溶かす「バスソルト」方式もおすすめです。
香りの拡散がゆるやかになり肌当たりもしっとりするほか、ミネラルを含む塩が温浴効果をサポートし、入浴後の保温感も長持ちしやすくなるでしょう。

精油を使う際の注意点

精油は高濃度のため、安全に楽しむために以下の3点を守ってください。

  • 希釈して使用する
    原液を直接肌に触れさせると刺激になる恐れがあるため、必ず湯やキャリアオイルで薄めてから使用する
  • 体質に合わせて確認する
    敏感肌の方や妊娠中の方、持病のある方は専門家へ相談するか、事前にパッチテストを行う
  • 換気と水分補給を忘れない
    適度な換気で香りを心地よく保ちつつ、入浴前後にコップ1杯の水をとる

香りの好みは人それぞれ異なるため、まずは1滴ずつから調整すると失敗しにくいでしょう。
“自分がほっとできる香り”を見つけて、夜のバスタイムをワンランク上のリラックスタイムへ育ててみてください。

簡単ストレッチとマッサージでリフレッシュ

お風呂の温かさは、体を清潔にするだけでなく筋肉や関節をゆるめる”天然のほぐし剤”としても働きます。
とくにナイトワークで緊張や立ち仕事が続いた日の夜には、湯船の中でできるやさしいストレッチやセルフマッサージを取り入れることで、全身のめぐりが整いやすくなるでしょう。

部位別セルフケア一覧

部位 ケア方法 ポイント 期待できる効果
呼吸に合わせてゆっくり左右に回す 急に動かさず、緊張が抜けるのを待つ 首こり緩和、血流促進
肩甲骨を意識して前後に回す/上下にすくめて緩める 背中上部まで動かす意識を持つ 肩こり軽減、可動域改善
足首 左右に回す、足指を広げて握る 浮力を活かしてリラックスしながら ふくらはぎ・膝周りの緊張緩和
ふくらはぎ 両手で足首からひざ下を軽くなで上げる 下から上へリンパの流れに沿って むくみケア、血行促進
背中 肩甲骨の内側に手を当て、体を左右にひねりながら圧をかける 「気持ちいい」範囲で無理なく 全身の巡り改善

首・肩へのアプローチ

仕事中に無意識で力が入りやすい首や肩は、入浴中にふわっとゆるめておくと翌朝の疲れがぐっと軽減されることがあります。
湯船で背筋を伸ばし、呼吸に合わせて首を大きくゆっくり回してみてください。
急に動かさず、緊張が抜けるのを待つように繰り返すのがコツです。
続いて、肩甲骨を意識しながら肩を前後に回したり、上下にすくめて緩めたりすると、固まりがちな背中上部まで温まりやすくなります。

足・ふくらはぎのケア

長時間立っていると、重力の影響で下半身に疲労物質がたまりがちです。
お湯の浮力を活かしながら、やさしい刺激を加えて血行を促しましょう。
足首を左右に回したり、足の指を広げて握ったりするだけでも、ふくらはぎや膝周りの筋肉が自然とゆるみます。
手のひらで足裏を軽く押すとさらに心地よく感じられるでしょう。
両手で足首からひざ下を軽くなで上げる動作も、お湯の中では摩擦が少ないため、リンパの流れに沿って下から上へ撫でるだけでむくみケアにつながると考えられています。

背中・肩甲骨周辺のほぐし方

背中は自分では触りにくい部位ですが、少し工夫することでマッサージしやすくなります。
肩甲骨の内側に手を当て、湯の中で体を左右に少しひねりながらゆっくり圧をかけてみてください。
背中全体に温もりを行き渡らせるイメージで動かすと、血流やリンパの流れが整いやすくなるでしょう。
無理に強く揉む必要はありません。
「気持ちいい」と感じる範囲で動かすことが、自然なリセットを促すポイントです。
お湯の温もりを利用したナイトルーティンとして、毎日少しずつ続けてみてはいかがでしょうか。

寝る前の入浴で安眠を手に入れるコツ


ナイトワークで夜型の生活が続くと、「寝つきが悪い」「眠りが浅い」といった悩みを抱える方も少なくありません。
そんなときこそ入浴のタイミングと環境を見直すことが、質の高い睡眠への近道となります。
ここでは、眠るためのスイッチを自然に入れる「就寝前入浴の工夫」をご紹介しましょう。

安眠のための入浴チェックリスト

項目 推奨 避けるべきこと
タイミング 就寝90分〜2時間前 就寝直前の入浴
温度 40℃以下のぬるめ 42℃以上の熱い湯
時間 10〜15分 30分以上の長湯
照明 間接照明、キャンドルライト 明るい蛍光灯
香り ラベンダー、サンダルウッド 刺激の強いミント系
入浴後 吸湿性のあるパジャマで保温 薄着で体を冷やす

就寝90分〜2時間前の入浴が理想的

体は一度温まったあと、深部体温が下がっていくタイミングで眠気を感じやすくなるといわれています。
そのため、入浴は眠る直前ではなく「90分〜2時間前」に済ませておくのがポイントです。
スタンフォード大学医学部教授の西野精治氏による研究でも、入浴後に深部体温が低下する過程で自然な眠気が誘発されることが示されています。
40℃以下のぬるめのお湯で10〜15分ほどゆったり浸かると、副交感神経が優位になり、体と心が自然と休息モードに入りやすくなるでしょう。
一方、長時間の入浴や熱い湯は交感神経を刺激してしまい、かえって目が冴える原因になるため注意が必要です。
出典:西野精治『スタンフォード式 最高の睡眠』サンマーク出版(2017年)

照明や香りも”夜仕様”に整える

就寝前はできるだけ視覚や嗅覚への刺激を抑える環境づくりが大切です。
間接照明やキャンドルライトなど暗めの灯りに切り替えることで、体内時計が”夜”を感じやすくなります。
ラベンダーやサンダルウッドなど、リラックスを誘う香りを湯船に取り入れると、呼吸も自然と深まり眠りに入りやすくなるでしょう。
スマートフォンやパソコンのブルーライトは入眠を妨げる要因とされているため、入浴後はできるだけ画面を見ない時間をつくることをおすすめします。

入浴後は”冷やさない”ことがポイント

せっかく温まった体が冷えてしまうと、深部体温が急降下して逆に眠りが浅くなってしまう可能性があります。
吸湿性のあるパジャマやソックス、薄手のガウンなどで、ほどよく体を包み込むようにしましょう。
寝具も冷えやすい足元を重点的に温められるよう、湯たんぽや電気毛布をあらかじめセットしておくと安心です。
入浴から就寝までの時間を快適に過ごすことで、眠りの質がぐっと高まることが期待できます。

まとめ

ナイトワークでの疲れは、日々の入浴でしっかりとリセットしていきましょう。
本記事で紹介した疲労回復入浴法のポイントは、以下の3つに集約されます。

  • 温度と時間を意識する
    40℃前後×10〜15分を基本に、体調に合わせて半身浴やぬる湯長めを使い分ける
  • 香りとセルフケアを取り入れる
    アロマや湯船でのストレッチで、心身のリラックス効果を高める
  • 入浴タイミングで睡眠の質を上げる
    就寝90分〜2時間前の入浴と、入浴後の保温で深い眠りへ導く

疲れを癒し、元気に働ける体を保つために、今日から少しずつ入浴方法を見直してみてください。
自分に合ったリラックス法を見つけて、バスタイムを最高の息抜きのひとときにしましょう。